2050年、葬儀をあげる人は少数派になる?アメリカの傾向から知る葬儀の未来

かつて日本のお葬式は世界一高額と言われており、仏式の一般葬を執り行うと200~300万円もの高額な費用がかかります。ところが最近は葬儀の簡略化が進み、都市部では多くの家庭が家族葬や火葬式のみの直葬を選択するようになりました。埋葬についても従来は遺骨を菩提寺の霊園に納骨する方法が一般的でしたが、最近はお墓を必要としない散骨や自然葬を選択する人が増えています。宗教観や死生観の変化に伴い、今後も日本人のお葬式のスタイルが変化する可能性があります。

現代人の葬儀費用の相場とお葬式の形式とは

かつては日本人の一般的なお葬式の相場は300万円といわれてきましたが、現在はもっと少ない費用で済ませる家族が増えています。

2017年に実施された日本消費者協会の調査の調査では、全体の約2割の家庭では実際にかかった葬儀費用を100万円以下と回答しています。全体の平均値は1,957,000円で、昔と比べるとお葬式にお金をかけなくなっている傾向がみられます。というのも、人々の価値やニーズの変化にともない、近年は手頃な料金で出来る家族葬や直葬を売りにする葬儀会社が多くなり、お葬式の形式についても、以前とは全く異なる方法で執り行われるケースが増えているようです。

また、昔は日本人のお葬式といえば、先祖代々伝わる仏教の宗派で儀式が執り行われて菩提寺に埋葬するというパターンが一般的でした。今は家の宗派を気にせずに葬儀会社にお坊さんを派遣してもらったり、無宗教で自由な形式でお葬式を行うケースも増えています。かつて葬儀は大切な宗教儀式のひとつでしたが、現代人のお葬式は一種のイベント(セレモニー)に変化しつつあるといえるかもしれません。

火葬後の埋葬方法の多様化

日本では土葬が認められていないので、どのような方法でお葬式を行う場合でも必ず火葬をする必要があります。従来の仏式葬だと、火葬後に遺骨を骨壺に納めてから四十九日が過ぎた後に菩提寺のお墓や納骨堂に納めるという方法が一般的です。

ただ最近は、火葬後の遺骨や遺灰の扱い方についても多様化しており、お墓を使わない方法を選択する人が増えています。団塊の世代よりも若い人たちであれば、海洋葬や樹木葬といった自然葬を希望するケースが少なくありません。自然葬であればお墓を用意する必要がなく、少ない費用で埋葬をすることが可能です。中には火葬後に遺骨や遺灰を受け取らずに、火葬場に処分してもらうことを希望する人もいます。

仏教では遺骨には故人の魂が宿っており、供養しないと死後の世界で成仏ができないと考えられています。ところが最近は無宗教や在来仏教とは全く異なる教理を教える新宗教を信じる人がいて、遺骨を埋葬したり供養する必要性を感じない人が増えています。死後の世界を信じない人々にとっては高額な費用を負担して遺骨をお墓に埋葬する必要がないため、自然界に散骨をしたり火葬場に遺骨を処分してもらう方が合理的です。

日本の一歩先を行くアメリカの葬儀事情とは

日本の一歩先を行くアメリカの葬儀事情とは

一般的にアメリカの流行や社会のトレンドは、10年くらい遅れてから日本に波及するといわれています。日本人の将来のお葬式事情を予想する上で、日本よりも一歩進んだアメリカの葬儀事情が参考になるかもしれません。

多くのアメリカ人の宗教キリスト教(プロテスタント)なので日本の仏教とは異なる点があるものの、価値観の変化という点では共通しています。従来のアメリカ人のお葬式は、キリスト教の教えに基づいて行われていました。死後に故人の魂が天国に行けるように、葬儀の際に教会で祈りを捧げたり讃美歌を歌うといった宗教儀式が行われてきました。現在のアメリカ人は従来の形式的なお葬式を嫌う傾向があり、葬儀の目的は死者の魂ためではなくて亡くなった人の家族や友人を慰めるもの、という考えを持つ人が増えています。そのため従来の宗教的な儀式を行わず、簡単なお別れ会をした後にすぐに火葬して埋葬をするというケースが多いようです。

近年の日本では、無宗教葬を選択する人が少しずつ増えているものの、ほとんどの家庭では仏教の郷里に基づいて家族葬・一日葬や火葬式の際に僧侶に読経をしてもらうケースが多いようです。将来は日本でも宗教的な儀式が敬遠されて、故人ではなくて家族や関係者などの生きている人のために葬儀を行う時代が到来するかもしれません。

今後の日本人のお葬式の在り方とは

従来のお葬式は宗教の教理に基づいた儀式のひとつで、死者の魂が成仏したり昇天できるようにする目的で葬儀が執り行われてきました。ただ最近は、宗教を信じない人が増えており、魂の不滅性を否定する科学的な考え方が支持されるようになっています。このとおり科学を信じるのであれば、死者のための宗教的な儀式は不要になります。

しかし、お葬式の役割が完全になくなってしまう訳ではありません。

家族や親しい人が亡くなった場合でも、しばらくの間は心の整理がつかずに故人が生きているかのような感覚が続くことがあります。大切な人が亡くなったことを感情面で自覚できずにいると、長期間にわたり辛い思いをすることになるでしょう。そうならないように、お葬式というセレモニーを行うことによって心の整理をして、故人が居なくなった世界で新たな生活を始めるきっかけにすることができます。

今から約30年後の2050年には、お葬式の様子が大きく変化する可能性があり、魂の成仏や昇天といった目的は完全に廃れてしまうかもしれません。それでも故人の家族や親しかった人が悲しむことには変わりがなく、生きている人のためのお葬式が続けられる可能性があります。

まとめ

近年の日本では死後の世界を否定する科学的な考え方に基づいた無宗教を選択する人が少しずつ増えているものの、僧侶を呼んで読経してもらうというスタイルが一般的です。それでも今は宗教的な考え方を嫌う人々が増えており、仏式葬を選択しても死後の世界を信じていない人も少なくありません。

30年後の2050年の日本人のお葬式事情を正確に知る方法はありませんが、宗教的・形式的な儀式は廃れたとしても、生きている人のためのお葬式という形で葬儀は続けられていることでしょう。

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