遺骨が空から落ちてくる?新しい供養の形「バルーン葬」の仕組みと内情

近年は科学技術の進歩とともに、現代人の生活様式が大きく変化しています。生きている間だけでなく、死後のお葬式や供養についても伝統的な方法とは異なる仕方を選択する人が増えています。従来は火葬後に遺骨を骨壺に納めて、お墓や納骨堂に埋葬する方法が一般的でした。最近は都市部でお墓不足が問題になり、海洋葬などの散骨を選択して“自然に還る”人もいます。バルーン葬も葬儀のひとつの方法で、海ではなくて空に還ることができる方法として注目を集めています。

バルーン葬の方法や特徴とは

バルーン葬はバルーン宇宙葬とも呼ばれ、民間の会社が手がけるサービスです。火葬後に遺灰や1mm以下に粉砕した遺骨を納めた専用の容器を、ヘリウムまたは水素ガスを充てんした“空飛ぶ風船”を使って上空に打ち上げます。高度30~50kmの成層圏に達するとバルーンが破裂し、粉砕した遺骨や遺灰が自然界に還るという仕組みです。
一般的に旅客機が飛行する高度は上空7~12km程度ですが、バルーン葬では遥かに高い高度まで遺骨を打ち上げることができます。もしも人が高度40km付近の成層圏に行くことができたとしたら、空が暗くなって宇宙旅行の気分が味わえることでしょう。ただしこの方法でも地球を離れて宇宙空間に出ることはできないので、打ち上げたバルーンや遺灰・遺骨などは全て地上に落下することになります。
ちなみにバルーンに使用するゴムや容器などは全て生分解性の成分で作られているので、地上に落下した後に自然環境を破壊する恐れはありません。バルーン葬は人間だけではなく、ペットでも実施することが可能です。

埋葬や散骨に関係する法律の規定とは

海洋や空に散骨を行う場合に気になるのが、埋葬方法に関する法律の規定です。
一般的に遺骨や遺灰は、墓地として認められた場所にしか埋葬することができません。定められた方法以外の方法で遺骨を埋葬したり散骨をすると、遺骨遺棄罪という法律に抵触してしまう恐れがあります。
散骨そのものは法律で認められている埋葬方法ですが、守らなければならない点があります。法務省の解釈によれば、節度を持って他の人の迷惑にならなければ散骨が可能です。民家・水源地・海岸近くでは散骨ができませんが、岸から遠く離れた場所であれば海洋散骨ができます。
バルーン葬についても、離れた場所で散骨が行われるのであれば法律上の問題はありません。きちんとした葬儀の形で儀式が行われるのであれば、遺骨遺棄にはならないでしょう。ただし、遺灰・遺骨以外の物品を打ち上げると不法投棄になってしまうので、副葬品を一緒に入れることはできません。

バルーン葬のメリットとは

バルーン葬のメリットとは

他の埋葬方法と比べて、バルーン葬にはいくつかのメリットがあります。
バルーン葬の一番のメリットは葬儀費用が安いことで、トータルで20~30万円で済みます。民間の樹木葬墓地を利用する場合だと50~70万円ほどですし、ロケットを使って遺骨を納めた小さなカプセルを打ち上げる宇宙葬だと100万円以上の費用がかかります。30万円で宇宙旅行の疑似体験ができるバルーン葬は、かなりお得といえるでしょう。
バルーン葬は全ての遺灰・遺骨を打ち上げることができるという利点もあるので、手元に遺骨を残しておくことを望まない方にもおすすめの方法といえるでしょう。ちなみにロケットを使用する宇宙葬だとカプセルに納める遺灰は数g程度で、残りの遺骨は別の方法で埋葬する必要があります。
バルーン葬は特定の墓地に埋葬したり散骨をする必要がないので、お墓を用意したり役所に届け出る必要もありません。そのため、お墓を持っていない方でも利用することができるというメリットがあります。バルーン葬は宗教・宗派に関係なく執り行うことができるので、無宗教葬でも可能です。

バルーン葬のデメリットとは

バルーン葬には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。これは「散骨」なので埋葬のためのお墓や納骨堂を用意する必要はありませんが、全ての遺灰・遺骨を打ち上げると手元に何も残らなくなってしまいます。このため、バルーン葬を行う前に遺骨の一部を残しておくかどうかを決めなければなりません。
バルーン葬は遺骨を成層圏に散骨することになるので、近隣住民の迷惑にならないような方法で行う必要があります。近隣住民とのトラブルを防ぐ目的で、通常は市街地から離れた郊外で行われます。
バルーン葬は新しい葬儀で一般的に認知されておらず、遺骨の埋葬方法に関して家族や親族間でトラブルが起こる恐れがあります。そのため、葬儀を執り行う前に他の親族や関係者に十分に説明して承諾を得ておく必要があります。
バルーン葬は天気に左右されやすく、大雨や強風の日には風船を打ち上げることができません。天候不順で葬儀の日程が延期になると、参列予定の方々に迷惑をかけてしまうかもしれません。

まとめ

海洋葬や樹木葬と比べるとバルーン葬はあまり知られていない方法ですが、手軽な料金でロマン溢れる宇宙に埋葬することができる埋葬方法です。

バルーン葬は認知度が低いので実施する場合は親戚や関係者の理解を得ておく必要があるものの、宗教・宗派に関係なくお墓を持っていない方でも葬儀ができるというメリットがあります。もしも近親者が亡くなって葬儀を行う予定がある方は、バルーン葬も検討してみることができるでしょう。

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